気持ちが疲れたときにおススメしたい、ヨシタケシンスケさんのスケッチ+エッセイ集『思わず考えちゃう』
2019年05月21日
- ブログテーマ:スタッフ一押し本のご紹介
こんにちは。スタッフ押川であります。
いま一番イキのいい絵本作家といえば、なんといってもヨシタケシンスケさんでございましょう。新しく発表される作品はいずれもベストセラーとなる超売れっ子にして、絵本デビュー作『りんごかもしれない』以来、さまざまな賞を受賞して高い評価を得ている実力派でもあります。わたしも、ヨシタケさんの新作が出るたびに購入しては、ニンマリしながら楽しんでおります。
そのヨシタケさんの近刊『思わず考えちゃう』(新潮社、本体1000円+税)は、日常のふとした時に「思わず考えちゃった」ことを描いたスケッチを集め、そこに込めた思いを語っていくというエッセイ集です。
たとえば、「ききうでのツメは切りにくい」というお話。ききうで(ちなみにヨシタケさんは左利き)のツメは、ききうでではない方の手で切らなければならないので、ききうでのツメは上手には切れない・・・ということに気づき、「近すぎるから、出来ないこと」がたくさんあるという話に繋げていきます。ちょっとしたことではあるのですが、わたしにはなんだか、妙に頷けるものがございました。確かに、近すぎるがゆえにうまく出来ない、思うようにいかないコトって、いっぱいあるんだよねえ・・・(思わず天を仰ぐ)。
また、ストローを入れる紙袋を小さく折りたたまずにはいられないヨシタケさんとは対照的に、妻君はくしゃくしゃの状態でそのままにしている・・・というところから、最も自分にとって遠い物が、世界の裏側まで行かなくても身近なあちこちに転がっている、ということを考えたりします。これにもまた「なるほどなあ」と思わされました。
子育てをする中で遭遇したひとコマを切り取ったスケッチにも、微笑ましくなるようなものがいろいろとあります。
とりわけお気に入りなのが、せっかく買ってもらったぬいぐるみを、何かの下敷きにしたまま別の遊びに興じる息子くんを見たヨシタケさんが、「プンちゃん(ぬいぐるみの名前)はさまっちゃってるよ?」と言うと、息子くんが、
「だいじょうぶ。プンちゃんいたいのだいすきだから」
と答えたというお話。まだ幼い身空で、ぬいぐるみに「いたいのだいすき」(!)という設定を与えるというオトナ顔負けの発想には、もうただただ脱毛・・・もとい、脱帽するばかりであります。
微笑ましいスケッチもある一方で、本書にはけっこう、まじめで深い考察も込められております。
「もし、そうなったら、そういうものをつくればいいだけだよ」という言葉を添えた、子どもを抱きかかえた親のイラスト。それは、「日々恐れていてもしょうがないよねって、ごくごく当たり前のことを自分に言い聞かすために描いた一枚」だといいます。
誰にでもある、明日の変化に対する恐れ。それを受け入れるためには、その時できることをやり、それに合わせたものをつくればいい・・・。シンプルだけど、人間への信頼にあふれた考え方に、しみじみと感銘を受けました。
微笑ましさと、「なるほど!」と思わられる発見、そして生きることをラクにさせてくれるメッセージが詰まった『思わず考えちゃう』。気持ちが疲れたときに、ぜひとも読んでいただきたい一冊であります。
岩切書店(宮崎こどものとも社)
本のことなら岩切書店、えほんのことなら"こどものとも社"。
絵本、児童書、書籍、おもちゃの販売、園庭環境・遊具のご提案をしております。
〒880-0912
宮崎市大字赤江字飛江田942-10
●公式ウェブサイト:https://iwakiri-shoten.com/
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祝50年!絵本雑誌『かがくのとも』の魅力を凝縮した『かがくのとものもと』
2019年05月17日
- ブログテーマ:絵本
こんにちは。スタッフ押川であります。もうずいぶん長いこと、このスタッフブログの更新を怠っておりまして、まことに恐縮なことであります。
わが社の使っているシステムがなんだか使いにくくってついつい更新が疎かに・・・って、ここでのっけからグチっていても仕方ありませんね(笑)。とにかく、これからまた気持ちを入れ替えて、いろいろな情報をマメに発信していきたいと思っております。あらためて、どうぞよろしくお願い申し上げます。
さてさて。福音館書店が出している絵本雑誌のひとつに『かがくのとも』があります。さまざまな分野の科学が見せてくれるオドロキを、小さな子どもたちにもわかりやすく、そして楽しく伝えている科学絵本雑誌であります。
その『かがくのとも』が、創刊から50年という節目を迎えたのを記念して、50年の歴史を集大成した一冊『かがくのとものもと』(本体価格2500円+税)が刊行されました。これまで刊行された『かがくのとも』を代表する名作の数々が、オールカラーの図版とともに紹介されています。
動物たちの「うんち」から見た生物の物質代謝のしくみ。子どもたちが生活の中で感じる「気持ち」のこと。パズルのような絵でわかる、数や形の不思議。アリの視点から見るオドロキの世界。おばあちゃんの干し柿から見えてくる、太陽の大きな力。工作や実験、遊びを通して知る科学の面白さ・・・などなど。『かがくのとも』が、いかに多様な切り口で科学のオドロキと面白さを伝えてきたのかがよくわかり、大人の好奇心も大いに刺激してくれます。
巻末には、創刊号から2019年3月号までの全600冊(プラス増刊号1冊)が、表紙写真と簡単な内容紹介とともにズラリと勢揃いしておりますので、資料としても大いに重宝しそうであります。
これまで『かがくのとも』を支えてきた主力作家さんによる「折込の言葉」も、いくつか再録されています。その中のお一人で、昨年逝去された加古里子さんは、こうおっしゃっています。
「科学絵本や科学読物の存在意義は、私たちが真に幸福で豊かな生活を守るためには、まだまだかしこさが不足で、それには学校や家庭や社会から学び教えられることと共に、子ども自身が本を通じて自主的にかしこく育って欲しいとの立場にほかなりません」
そうなんですよね。小さい頃から科学に親しんでおくことは、これからもずっと、幸福で豊かな生活を送るためにも大切ですよね。『かがくのとものもと』は、子どもとともに科学のオドロキと楽しさに触れることの大切さを再認識させてくれます。
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