震災の日に生まれた尊い命に、祝福を。『あの日 生まれた命』

2015年03月15日

こんにちは。スタッフ押川であります。

先週の11日で、東日本大震災の発生から4年。2万人を超える尊い命が失われたことの重みを、あらためて噛み締めた向きも多かったことでしょう。
多くの尊い命が失われた一方で、この日に生を受けた子どもたちもいました。震災の被害がとりわけ大きかった岩手・宮城・福島の3県でも、110人以上の子どもたちが生まれていました。
困難な状況の中で生まれた小さな命と、それをしっかり守り抜いた親御さんたちを見つめた、昨年の3月11日放送のNHKスペシャルを書籍化したルポルタージュが、『あの日 生まれた命』(NHKスペシャル「あの日 生まれた命」取材班編、ポプラ社、1620円)です。
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津波に飲まれた病院に閉じ込められ、生まれたばかりの我が子とともに寒さに凍えた母親。震災でおばあちゃんを亡くしてしまったことで、同じ日である息子の誕生日を、生まれた日に祝うことができないでいる母親。出産に立ち会うために離れていた職場の特別養護老人ホームが津波に襲われ、多くのお年寄りが亡くなったことから罪悪感に苦しんでいる父親。震災後、娘と父親を襲った命の危機を乗り越えた一家•••。
困難な状況の中でも、健気に、懸命に育ってきた子どもたちと、運命の重さに苦しみ、葛藤しながらも、その子たちを守り、時には我が子の存在に救われたりもしたという親御さんたちのエピソードの一つ一つが、深く胸を突いてきました。
本書に登場した親御さんが語っていた言葉で、とりわけ印象に残ったものがあります。同様の言葉は、複数の親御さんからも発せられていました。

「私がこの子を産んだんだから、一生、守っていくという気持ちになりました。私が一番、この子を守る、守り抜くって自分の心に刻み込みました」

親になるということ自体、とても大きな決意と覚悟が伴うことでしょうし、子どもを守りたいという思いも、子を持つ親であれば誰もが抱く思いでしょう。ですが、未曾有の震災という苦難のもとで命を授かったことで、我が子を守り抜くという決意と覚悟は、より一層大きく強いものとなったのでしょう。そのことに、胸を打たれました。

生まれたばかりの子どもとその家族に、惜しみない支援を行った方々の存在にも、胸を打つものがありました。自ら被災しながらも、「母親がご飯を食べなければ、赤ちゃんにもおっぱいがいかないし、なんとかして食べさせてあげたい」との一心でおにぎりを握り、水に浸かりながら勤務する病院に届けたという女性の話には、目頭が熱くなりました。

本書に登場した親御さんたちの多くが、共通して語っていたことがありました。一つは、多くの人たちからの支援があったことを忘れずに、人の痛みがわかる優しい子に育って欲しい、という願い。そして、命があって幸せな生活とは、決して当たり前のことではないのだ、という思いです。
被災した地域の復興には、まだまだ時間がかかることでしょうし、震災の悲しみや辛さが消えてなくなることもないことでしょう。
失われた数多くの命を悼みながらも、困難な状況の中で生まれてきた尊い命に惜しみない祝福を捧げたいと、本書を読みながら思いました。どうかご家族ともども、これからの人生が幸せに満ちたものとなってほしいと、心から願います。
そして、あの日生まれた子どもたちが、被災した地域の復興とともに歩んでいけるよう関心を持ち続け、自分たちにできる支援を微力ながらやっていかなければ、と思いを新たにいたしました。

ルポルタージュ版『あの日 生まれた命』と同時刊行された『あの日 生まれた命 48人の子どもたちと家族からの手紙』(同上、1296円)は、ルポルタージュ版に登場した方々をはじめとする、被災地で生まれた子どもたちの親御さんから寄せられた手記を集めたものです。こちらは、これからじっくり読みたいと思います。

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