驚きの生きものたちから、生物多様性の重要性を教えられる『新種の冒険』

2015年04月20日

こんにちは、スタッフ押川であります。

地球という惑星の中で暮らしている、たくさんの動植物。そのうち200万種には名前がつけられているのですが、いまだ未発見で名前もつけられていないという動植物はまだまだたくさんいて、それらはなんと1000万種もいるといいます。単細胞生物まで含めると、その数はさらに膨大なものになるのだとか。
しかし、研究者たちのたゆみない探究心と、さまざまな技術の発達により、それら未知の生きものたちも少しずつ「新種」として見出され、名前がつけられて分類系統の中に組み込まれていくことになります。毎年、平均で1万8000もの新種が報告されているのだとか。
2000年以降になって見出され、名前がつけられた「新種」の中から、驚くような特徴や生態を持った動植物100種類を選りすぐり、オールカラーの写真と解説で紹介した図鑑本が、この『新種の冒険 びっくり生きもの100種の図鑑』(クエンティン・ウィーラー&サラ・ペナク著、西尾香苗訳、朝日新聞出版、税込3024円)です。

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写真の1枚1枚を眺めていくだけでも驚きがいっぱいで、なんだかワクワクさせられるものがありました。
着物の江戸小紋のような文様で彩られたウミウシ。放射状の凝った模様で塗り分けられたウニ。工芸品のように細かく端正な造形を、ミクロの大きさの中に見出すことのできる珪藻•••。そんな美しい外見の生きものたちを見ると、自然が作り出す美の素晴らしさにため息が出そうになります。また、ダンボの耳のようなヒレで泳ぎ回るというタコの可愛らしさには、思わず顔がほころんでしまいました。
かと思えば、一見すると脳なのか泥なのかわからないような、異様な外見の(しかも、単細胞生物としては破格の12㎝という大きさの)原生生物である有孔虫や、上に向かって細長く突き出した「首」から、これまた長い牙が生えたクモ•••などなど、まるでSF映画に出てくるモンスターやエイリアンのような異様な外見を持った生きものがあったりします。それはそれで、人間の想像力を超えるような、自然が生み出した造形の妙に感心させられたりいたしました。
中には、できればお近づきになりたくないなあ、というような生きものもあります。脚を広げると30㎝にもなるという「Mサイズのピザほどもある」巨大なクモ(もっとも、「サイズゆえに恐怖を引き起こすのを除けば」人間には害は及ぼさないそうですが)。もし目に入ると失明の危険があるという毒液を約3mも噴出させる、その名も「ドクハキコブラ」。刺されてもまったく痛くないのに、刺されてから20分もたたないうちに心臓発作で死ぬこともあるというクラゲ•••。
すでに絶滅して存在しない生物も、化石として発見されれば「新種」として登録されることになります。そんな「化石になってるけど新種」の中でもとりわけ変わっているのが、「葉足動物」という絶滅した動物群の一種です。化石で見る限り、サボテンなどの植物にしか思えないこの動物、復元図を見てもちっとも動物には見えない•••。

本書には、絶滅の危機に瀕している生きものたちも紹介されています。ケモノハジラミというシラミの仲間は、絶滅危惧種であるスペインオオヤマネコ「だけに」寄生するがゆえに、絶滅の危機にあるというのです。
1種の生きものの絶滅が、別の生きものが絶滅する原因ともなってしまう•••。たとえ見た目がブキミであったり、やっかいな性質を持っている生きものであったとしても、生態系を維持していくためにはやはり大事な存在であったりするのだ、ということが、このシラミの事例からもよくわかりました。
一方で、深海にある超高温の熱水噴出孔付近に生息するカレイや、標高3000〜4200mの高山地帯に生えているポピーなど、過酷な環境に適応し、しぶとく頑張っている生きものたちも登場しています。
生命というのは脆くもあるが、同時にしぶとくてしたたかでもある。そのことが、生物の多様性を育んでいるのだ•••。本書を読むと、そのことをしみじみ感じさせられます。
解説文は生物学の知見をしっかりと踏まえていて勉強になりますが、ところどころにユーモアも散りばめられていて、好奇心を刺激されつつ楽しく読み進めることができました。

変わり種の生きものたちに驚かされ、楽しむうちに、生物多様性の重要性、大切さを学ぶことができる、興味の尽きない一冊です。

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