熊本市動植物園の動物たちとつながるための一冊『素顔の動物園』

2016年10月11日

こんにちは、スタッフ押川であります。

先月(9月)の連休に熊本に出かけ、そのおりに中心街の書店めぐりをやったことは、わたしが前回綴った記事でも触れましたが、そのときに立ち寄った、明治時代創業の老舗「長崎書店」(店内には村上春樹さん直筆の色紙もございました)で見つけて購入したのが、この『素顔の動物園』(熊本日日新聞社)であります。熊本市動植物園で飼育されている102種の動物たちを、カラー写真と短い文章で紹介した写真集です。

紹介されている102種の動物たちの多彩さに、まず惹かれます。チンパンジーやライオン、クジャクなどの、動物園ではお馴染みの顔ぶれはもちろんのこと、国内で飼育されているのはここだけという中国の珍種ザル・キンシコウや、熊本生まれの地鶏「肥後五鶏」といったものも飼育されていたりします(ニワトリの展示は全国の動物園でも異例なのだとか)。
ちなみに、わたしも熊本の居酒屋で食してその濃厚でコクのある味わいに惚れ込んだ、肥後五鶏の一つ「天草大王」は、名前にふさわしいような威厳あるツラ構えが、またいい感じでありました。

動物たちの種類の多彩さも魅力なのですが、本書は収録されている写真一枚一枚が実に素晴らしいのです。
取材を担当した写真部記者氏が「図鑑のような写真じゃダメ。喜怒哀楽が伝わる1枚にとことんこだわりたい」と、動植物園に通い続けて撮った中から選び抜かれたという写真の質は高く、写真集としても十分に楽しめる一冊となっております。

中でも圧巻なのが、超望遠レンズで撮影された動物たちの顔のどアップ写真。見開き2ページにわたってどどーんと掲載されているアムールトラや、ワニの一種メガネカイマンの鋭い眼光には、思わず「うっ」と言いつつたじろいでしまうような迫力がありました。一方で、派手な原色で彩られた顔が特徴的な霊長類の一種・マンドリルの顔のアップは、ケバケバしい顔の奥にある優しい瞳が、まことに印象的です。

マダガスカル島に生息している絶滅危惧種・エリマキキツネザルの父娘の写真は、父親が娘にお説教しているような構図がすごく面白いですし(とりわけ、いかにも済まなそうな娘ザルの表情には萌えそうになります)、中国原産で野生では絶滅したという珍獣・シフゾウの写真は、「ひづめは牛、頭は馬、尾はロバ、角はシカ」という4つの特徴がすべてわかるポーズを決めた瞬間をバッチリ捉えていて、これもお見事でありました。
それぞれの動物たちを紹介した文章には、担当する飼育員さんたちのコメントも織り込まれていて、そこから窺える動物たちの「素顔」も、なかなか面白いものがありました。

多彩で個性豊かな熊本市動植物園の動物たちですが、現在熊本の皆さんは、これらの動物たちに会うことができません。
4月の熊本地震により、「再開まで1年以上かかる」といわれるような大きな被害を受けてしまった熊本市動植物園は、目下長期の休園を余儀なくされているのです。本書の末尾には、園内の通路がひび割れていたり、ミニSLなどが倒壊したり、液状化した泥で覆われたりしている園内のようすも伝えられております。幸いなことに、動物たちはすべて無事だったそうですが、ライオンやトラなどは県外に緊急避難したのだとか。

本書『素顔の動物園』の売上の一部は、熊本市動植物園復旧に向けた救援金に充てられるとのことです。もちろん、注文すれば宮崎でも購入は可能であります。
本書の存在が1人でも多くの方に知れ渡り、熊本市動植物園が一日も早く地震前の姿を取り戻して再開するための後押しになることを願いたいと思います。

ただいまブログのテスト中です。

岩切書店(宮崎こどものとも社)

本のことなら岩切書店、えほんのことなら"こどものとも社"。
絵本、児童書、書籍、おもちゃの販売、園庭環境・遊具のご提案をしております。

〒880-0912
宮崎市大字赤江字飛江田942-10

●公式ウェブサイト:https://iwakiri-shoten.com/
●電話:0985-52-5700

コメント(0)

■コメントする

月別アーカイブ

PAGE TOP