甘〜い味に秘められた歴史と社会のありようがわかる『チョコレートの世界史』

2015年02月11日

こんにちは。スタッフ押川です。
いよいよ今週末ですねえ、バレンタインデー。当日は多くの女性の皆さまと男性諸氏にとって、幸せな1日となることを願うばかりであります。
•••え、そういうお前さんはどうなんだ?ですと。あ、わたくしのことは一切気にしないでいだだいて構いません。わたくしはわたくしで、一人で強く生きていきますので。ま、万が一来るものがあるのなら拒みゃしませんけれども。
わたくしのことはともかく、今回はこの時期に興味深く読める一冊、『チョコレートの世界史 近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石』(武田尚子著、中公新書)をご紹介したいと思います。
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チョコレートはどのように生み出され、普及していったのか。本書は近代ヨーロッパの歴史を軸にして述べていきます。
チョコレートの原料であるカカオ豆の歴史は古く、既に紀元前には利用が始まっていたといいます。中米のマヤ・アステカ文明においては、神々へ捧げられる供物であり、貨幣でもあり、薬用として特権階級に飲まれていたというカカオ。やがて、アステカ文明を滅ぼして植民地化したスペイン人によって、砂糖で甘みをつけられたカカオ飲料は多くの人々に受け入れられ、「チョコレート」という言葉が生み出されます。
その後、中米やアフリカ、アジアに植民地を獲得したヨーロッパ諸国は、プランテーションにより栽培したカカオ豆と砂糖の販路を広げ、世界商品として展開していきます。そして、機械設備や輸送手段の近代化で大量生産が可能となり、固形化もされたチョコレートは、庶民にも手の届くものとなっていったのです。
神々への捧げものから、グローバルな世界商品へと変わっていったチョコレートの歴史には、世界史の大きな流れが凝縮されていることが、本書を読むとよくわかります。

わたくしが特に興味深かったのは後半、日本でもお馴染みの「キットカット」を生み出した、イギリスのロウントリー社(現在はネスレ社)をめぐる記述でした。
菓子製造業としてはいち早く、大規模なマーケット・リサーチを行ったり、テレビCMを始めたりしたロウントリー社。ビジネスのみならず社会改良にも熱心だったそうで、工場のあったヨーク市の労働者階級1万1560世帯を個別訪問して生活状態を調査、その結果を研究書として出版したとか。また、週休二日制や女性従業員への教育プログラム、産業心理学の導入などといった従業員の待遇改善にも取り組んだそうな。いろんな意味で先駆的な企業だったんだなあ、と驚きました。
主力商品のキットカットの歴史も興味を惹かれました。チョコにくるまれた層状のウエハースや、割りやすくするための「みぞ」についてのエピソードも面白かったのですが、第二次大戦下で原料の調達もままならない中、「平和な時代」のような商品が作れないことへの苦渋がにじむ、ラッピングに記された文面には胸打たれるものがありました。そう、平和であるからこそ、チョコレートを美味しく頂くことができるんですよねえ。

本書を読めば、チョコレートの甘さを、より深〜く味わうことができること間違いなしです。チョコをたんまり貰える向きはもちろん、貰えない向きにも大いにオススメしたい好著であります。

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