自然保護のあり方をとことん問い直す『外来種は本当に悪者か?』

2016年11月21日

こんにちは。スタッフ押川であります。

本を読むことの楽しみの一つは、これまで自分が抱いていた思い込みや、信じて疑わなかった「当たり前」「常識」が揺さぶられ、新しい視野とものの見方が拡がっていくことではないか、と思います。
今回ご紹介する『外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD』(フレッド・ピアス著、藤井留美訳、岸由二解説、草思社)は、最近読んだものの中でもっとも、わたしの抱いていた思い込みや「常識」を揺さぶってくれたスグレモノの一冊であります。

「外来種」というコトバはたいてい、あまり良い文脈で用いられることがありません。外から侵入してきて、平穏に暮らしている在来の動植物を脅かし、ひいてはその生態系をも破壊してしまう、おそるべき「エイリアン」的な存在・・・。「外来種」とされる動植物にはおおかた、そんなマイナスのレッテルが貼られ、忌むべき存在として駆除の対象になったりしています。

本書は、とかく「善玉・悪玉」という単純な二元論で捉えられがちな外来種と在来種の関係性を再考し、実は外来種が自然の復元力に大いに寄与しているのだ、ということを、世界各地の実例を多数挙げながら解き明かしていきます。

植物のほぼ全てが、世界各地から持ち込まれた外来種で占められていながら、多様性の豊かな生態系が完璧に機能しているという南大西洋の孤島・アセンション島。ヴィクトリア湖におけるホテイアオイやナイルパーチ、黒海におけるクラゲの大繁殖の背景。原発事故により人間がいなくなったあと、野生生物の宝庫となっているチェルノブイリ・・・。

本書に多数挙げられている事例の数々からは、善悪二元論に立脚した「外来種」「在来種」といった区別が、結局は人間中心の都合と理屈でしかない、ということが実によくわかります。
そして、自然は傷つけられたり変容を余儀なくされたとしても、変化を繰り返しながら再生し、復活していく、たくましくてしたたかな存在であることを知ることができ、読んでいて嬉しくなるような希望を感じました。

これまでの自然保護にあった思い込みをとことん問い直し、自然と人間との共存のあり方を再考する本書は、実に有益な刺激を与えてくれました。
多くの方に読まれることを願いたい一冊であります。

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